top of page

WT:このTシャツはオーガニックコットン100%ということですが、オーガニックコットンは認証を得るだけでもかなりの手間がかかると聞きます。どんな苦労があるのでしょうか?

 

鈴木さん:オーガニックコットンには様々な認証の種類があるのですが、ピープルツリーではGOTS(オーガニック・テキスタイル世界基準)認証というものを取得しています。GOTSとは、原材料がオーガニックであるだけでなく、生地の生産・加工・保管・流通のすべての過程で第三者機関が調査の上、環境的、社会的な基準を満たした商品に与えられる認証です。このすべての過程において少しでもオーガニックではない薬品や素材が混ざってしまうと認証が取れなくなってしまうので、かなり厳正な管理・調査・そして、証明が必要になります。まだまだ日本では認証に対する価値が低く、認証を取得するための手間やコストに見合う売り上げは期待できません。そのため、認証を取得しようと思う企業が少ないんです。シンプルなTシャツに見えて、実はすべての生産工程における団体・そこで働く人々の協力がないと作ることのできない、とっても手間のかかっているものなんです。

 

 

 

WT:このTシャツはインドでとれたオーガニックコットンを使い、縫製もインドでおこなっているとのことですが、Tシャツに限らず、言葉も文化も違うインドという地でのものづくりは、どういったものなのでしょうか?

 

鈴木さん:まず、品質を常に確認し、維持するために定期的に連絡を取ることは欠かせません。シーズンで忙しい時には、毎日のように生産管理部門が現地の生産者とオンラインで綿密な連絡をとっていたりします。

 

コミュニケーションを取るなかで、やはり文化の違いをいかに乗り越えるかということを重視しています。例えば、工場で働いている彼らの普段着は、インドの伝統着である「サリー」。普段、洋服を着るという習慣がないんです。となると、そもそも日本人が常識だと思っている衣服の“当たり前”と彼らの“当たり前”は、当然ながら違ってくるわけです。例えば、日本では縫製が1~2センチ違うだけでサイズが一つずれてしまうのは当たり前ですが、サイズという概念がないサリーを着ている彼らにとってはその1~2センチは、なんでもないもの。そういった衣服の価値観の違い・文化の違いを乗り越えて、いかに日本の品質に見合ったものづくりをしてもらえるか、というところが大変なところですね。

 

また、言語の壁もかなり大きいなと感じます。ピープルツリーのスタッフは常に現地スタッフと連絡を取り合っていますが、インド側のスタッフでコミュニケーションが直にできるのは英語が話せる一部のマネージャークラスの人たち。となると、彼らから従業員にわかるように、訳してもらう必要があるのですが、インドは多言語の国。従業員同士でも違う言語を話す人がたくさんいます。ひとりひとりにきちんと理解してもらうにはかなり根気が必要なんです。よりよいものづくりをするために、複雑な仕様のデザインについては言葉だけでなく日本で部分サンプルを作って送ったり、といった工夫もしています。  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 ーオーガニックコットンVネックトップー

ピープルツリーのロングセラーTシャツ。伸縮性に優れたフライス編みと呼ばれる編み方で、肌触りは抜群。体にフィットするのでインナーとしての着用もオススメです。Vネックで首元を女性らしく綺麗に見せてくれるデザイン。

オーガニックコットンVネックトップ

¥3.500(税込¥3.780) 

ピープルツリー広報、鈴木啓美さんインタビュー

フェアトレードファッションのパイオニア的存在である、ピープルツリー。フェアトレードという言葉が世の中に普及していない26年前から、積極的に日本で普及活動を行ってきた。そんなピープルツリーからwhiTEEが紹介したいのは、ロングセラー商品であるオーガニックコットンVネックトップ。一見シンプルでベーシックなVネックTシャツだが、一度着るとやみつきになるそのソフトな肌触りが人気の秘密。オーガニックコットン製で、着る人だけでなく生産者や環境にも優しい。

そんなピープルツリーの“顔”とも言えるこの定番Tシャツが完成するまでのストーリーをお伺いした。

WT:オーガニックコットン商品は大きいブランドさんでも販売し始めていますが、その数はまだまだ多いとは言えない状態だと思います。オーガニックコットン商品を販売するという点において、なにか大変なことはありますか?

 

鈴木さん:お話ししてきたように、オーガニックかつフェアトレードの商品が出来上がるまでにはかなりの手間がかかっているので、どうしてもファストファッションに比べて値段も割高になってしまいます。実際、ピープルツリーのお客さま、とくに若い学生の方からもっと手の届きやすい価格にしてほしい、といったような声をいただくことがあります。ピープルツリーの想いに共感していただけるのはとても嬉しいのですが、お客様の声に応えようと無理して安くしてしまっては、やはりサプライチェーンのどこかでその無理のしわ寄せが出てきますよね。やはり、いかに“価格”以外の要素で商品を見てもらえるかが大切ですし、そこが難しいところでもあると感じています。 

私としては、オーガニックやフェアトレードが、“自分の人生を楽しくする選択肢のひとつ”として捉えてほしいと考えています。よく社会に良いことは絶対善で、やらなければいけない義務、という風に捉えてしまう人もいると思うんですが、そもそも楽しくなかったら、続かないと思うんです。

社会的な情報ってどうしても頭でっかちに考えがちですが、一番大切なのは、自分の心が動くかどうかだと思います。例えば着心地が良くて気持ちいい、とか、こんな人がこんな想いをもって作っているんだ、という背景を知れる満足感だとか。決して義務感ではなく、自分が五感で本当に共感できる商品を買ったりお店を選んだりすることが大切なのではないでしょうか。

一見シンプルなTシャツですが、実は綿の栽培から加工、流通まで実に様々な人の手を通して私たち消費者の元へやってきている、ということを改めて感じられたお話でした。オーガニックコットン&フェアトレードだからこそ、これだけの手間がかけられているわけですが、手間がかかるということはそれだけ雇用を生み出しているということ。大量生産・大量消費の経済構造の中で生産性だけを追求し、どんどん機械化が進んでいるアパレル業界。そんな中で生産性だけでなく雇用、そして人の手を通すからこそ生まれるストーリーを大切にしているピープルツリーさんの想い・姿勢は、いまの世の中だからこそ見直すべき価値があるのではないかと思いました。

bottom of page